終わりなき矛盾        小堺高志    2−23−03

北朝鮮の核開発が話題になっている。米国CIA長官は「北朝鮮はすでに実験前の段階のアメリカ西海岸にまで届く核搭載可能な弾頭ミサイルを持っており、1ー2個の核弾頭を持っていると思うと発表した。そしてそのテポドンやノドンのミサイルは間違いなく平和ぼけした日本にも向いているのである。

北朝鮮にとり韓国は社会体制的対立はあるものの、あくまで祖国統一を願う同胞が住む国、破壊的な核兵器を使うには心情的に許さぬものがあろう。一方日本はかって侵略者として被害を加えた憎き国、彼らにとり核弾頭でもなんでも良心の痛みを感じず打ち込める国なのである。

大半の日本人は「50数年前はたしかに被害を与えたかもしれないが、今の日本は北朝鮮に対してなにも悪いことはしていない。核弾頭を打ち込まれるような覚えはない」と言うかもしないが、最近読んだ「わさび味の日本人、唐辛子味の韓国人」という本によると朝鮮では先人の「恨」を持ち続けることは先祖に対する「孝」なのだという。そこに日本人が思う以上に永く韓国人が日本を憎み続けられる理由があるのである

とりわけ北朝鮮は独裁者金親子がこの50数年間、自分のサイドに都合の良い事しか国民に知らせていないのだから、彼らの対日、対米感情はとことん悪くなって当然である。もともと理想的な共産国を目指したはずであるが、金日成の選んだ道は正反対の独裁社会そのものであった。国民をだますには国外に敵を作り、危機感をあおらなければならない。その対象が資本主義の国々であり、日本である。思想的屋台骨となる金日成抗日英雄説も、戦後スターリンが金日成を北朝鮮の指導者と任命した時、実在した英雄、金日成(本物はすでに其の時には死亡)の名前を語ることを黙認したものであると、時のソビエト関係者が認めている。(フジテレビの報道による)金日成は英雄でもなんでもない、ちょっと頭の良い、時勢を読めるただの一兵士であったという。

金正日は父の金日成に「もし、こちらが核兵器を使ったら、北朝鮮も核の攻撃を受ける、その時はどうする」と問わ「最後は世界を破滅させても良い」と応えたと、その場にいた核開発にたずさわり今は韓国に亡命している人が言っている。子供のころから甘やかされて育った金正日は金日成よりさらに独裁的であり、冷酷非道である。

このまま行くと北朝鮮の次の段階としては「人工衛星の打ち上げ実験」という名目での、アメリカを挑発するようなミサイル発射実験、そしてやがては核実験、ということになると思う。結局北朝鮮は核を常に切り札として持ちたいのであり、その切る札をちらつかせることにより世界でその存在感を高め、有利に外交を進め、経済援助を引き出したいのである。そうすることしか経済も農業も破綻しているこの国にとり、生きる道はないと思っているのである。

例えれば、学校に一人の不良がいて、喧嘩ごしで木刀を持ってきた。こちらはすでに木刀を持っているのだが、喧嘩で大怪我をするのは馬鹿らしいと、素手で喧嘩することを提案し、周りの者もどうして扱ったらいいか分からず、とりあえず木刀を下ろさせるため、なだめて食事をご馳走しようと提案する。話し合いでその場を収めようとした訳だが、その不良は自分が木刀を持つと、今まで馬鹿にしていた奴までも一目置いてくれる。この木刀を取り上げられたら自分はまた、ただの嫌われ者に成り下がり誰も意見を聞いてくれなくなる。それが分かった時、この不良は決して木刀をあきらめないはずである。

ここに今後の北朝鮮がとろうとしている姿が見えてくる。私が思うには北朝鮮はこの例で言えば、全校生徒に「俺は木刀を持っているんだ」という事実を知らせ、認めさせたいと思っているはずである。それが即、学校における自分の存在位置に関わってくることなのである。一時的に木刀はもう持っていないというジェスチャーをとることもあるかもしれないが、木刀を手放すことは絶対にない、いつでも取り出せるところに隠してあると思うのが自然である。

その結果どうなるかと言えば、核拡散、周りの国も同じ核を持って核を制しようとすることになる。世界中でより多くの国が核を持つことになるのである。

してその核カードを武器に北朝鮮のように世界で通らぬ我儘をごり押しして行く無法者国家も出てくるのである。今、北朝鮮の望むことは核をちらつかせて国際社会での発言権を強め、金正日体制を認めさせ、アメリカから不可侵条約の締結を勝ち取り、日本から戦争賠償金として大金をせしめることである。

アメリカがあらゆる影響力を使って他国の核装備を抑制できた時代は90年代で終わりである。

アメリカのブッシュ大統領はイラクの後、さらに本格的に北朝鮮との対決色を強めていくであろう。

北朝鮮が“経済制裁イコール宣戦布告と捉える”と言っている以上、北朝鮮に対する次の段階はさらに戦争への危機感を増すこととなる。好戦的な大統領を選んでしまったアメリカのこの方針3年前の大統領選から分っていた事である。いつの間にか国際世論がロシアに変わって中国がアメリカの対抗勢力として核武装することを容認しつつあるように、北朝鮮の核武装もまた抑制出来ない事実となろう。そこにアメリカの理論は通らないのである。それを認めたうえで平和交渉をする道しかない。アメリカが核・生物兵器を持たせまいとイラン、北朝鮮で武力を使うことは、いつかその流れは世界核戦争へと続くことになる。話し合いで平和裏に事が治まることを祈るが、人類はもともと武力を持たずに話し合いで物事を収めるほど利口な生物ではなかったのである。これからも世界は武器をちらつかせながらのやり取りが世界各地で行われることになる。そんな綱渡りをしながらもなんとか戦争にならなければ、それを平和といわざるをえないであろう。しかし武器があればいつかそれを使う時が来るであろう事も、残念ながら愚かな人間の定めである。

おそらく宇宙に存在するであろう高等生命体は人類より利口で武器で脅しあうことなく歴史を刻んできた高度文明をもつ社会を形成しているはずである。人類はさらに長い歴史を築くには愚か過ぎた、その分岐点をすでに通過して、破滅への道を進んでいるように思えるのである。

国境のない世界が国と国との争いのない社会であろうか?そのためには国と国との争いをなくし、統一しなければならない。国の統一は常に権力の奪い合い・・・・・・終わりなき矛盾である。

そんなことを思いながら最近の国際情勢を見守っている。